テレフォンカード
財布を新調し、カード類等の内容物の入れ替えのために整理した際に見つけ出した。
携帯電話が普及した昨今では、旧世代の遺物と言っていいシロモノだ。
あまりの使用頻度の低さが、40以上の度数の蓄えに現れており、ほとんど新品と言っていい状態にあった。
小学校に入学した際に手渡されて以来、ずっと肌身離さず持ち続けてきた。
転校を繰り返してきた自らの履歴として、数多くの自宅であった電話番号がそこには記されていた。
自身の居場所を忘れまいとする健気さが、どうやら自分の中にもあったらしい。
そのカードを、ただただ眺めている自分に気が付いた。
そしてなにを考えてか、公衆電話に籠り、そのひとつにダイヤルを回してみた。
しかし、どこにも繋がりはしなかった。
虚しい機械音声だけが耳に響いた。
なにかを口にしかけたけれど、なにを口にしていいのか分からなかった。
そんな2016年の秋でした。
11月27日。
京都を離れます。
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上記の文章をどうやら3年前に書いたらしい。
当時は上手く書けたと得意気だったが、今となってはどうだろう。
当時は居場所探し/自分探しの無謀な挑戦を言い訳できる範囲で模索していた気がする。
なにはともあれ、明日、晴れていたらまた昔の住所に向かってみようと思う。